ネクター・ガン、ユンジョン・ソ
CNN 2025年9月10日
先週、北京で行われた習近平の大規模な軍事パレードに招待された20人以上の外国首脳の中で、最大の外交的成果を得たのは金正恩だった。
この北朝鮮指導者は、多国間外交への華々しいデビューを飾り、習近平やロシアのウラジーミル・プーチンと肩を並べ、西側に対して、彼が世界で最も強力な二人の独裁者の支持を享受し、彼らが形作ろうとしている新しい世界秩序の中心的存在であることを示す挑戦的なパフォーマンスを行った。
その舞台裏で、金正恩はプーチンとの絆を強調した。プーチンは、ウクライナに対するロシアの戦いで戦った北朝鮮兵の犠牲を「決して忘れない」と誓った。また金正恩は、6年ぶりとなる習近平との首脳会談を行い、モスクワとの軍事同盟強化によって緊張していた長年の後ろ盾との関係を修復した。
極めつけは、中南海にある習近平の居住地でのお茶会と晩餐会に金正恩が招かれたことだった。中南海は中国政治権力の中心に位置する指導者の団地であり、この特権を与えられたのは、パレードに招待された26人の外国ゲストのうち、プーチンを除けば金正恩だけだった。
長年、北京とモスクワの双方から 下位の同盟者として扱われてきた若い指導者にとって、この厚遇は圧倒的な宣伝上の勝利であった。
しかし彼にとって最も決定的な勝利は、カメラに映し出された出来事ではなく、言及されなかった事柄かもしれない。
史上初めて、習・金首脳会談の公式発表文から「朝鮮半島の非核化」に関する記述が完全に消えたのだ。これは2018年から2019年の間に5回開かれた会談で繰り返し使われていた表現からの劇的な転換である。
専門家たちは、この省略が、金が長らく求めてきたもの、すなわち、中国による北朝鮮の核保有国としての事実上の承認を獲得した可能性を示すと指摘する。
金正恩の下で平壌が違法な核・ミサイル計画を加速させているにもかかわらず、それは北京にとって衝撃的な方向転換となる。中国は長年、朝鮮半島非核化の目標を掲げ続けてきたからだ。
カーネギー国際平和財団の上級研究員の趙通は、「非核化の目標が正式に習・金会談の公式発表から取り除かれたことで、中国の長期的政策における重大な変化が確認された」とし、「渋々ではあるが重大なことに、北朝鮮の最も強力な同盟国が、非核化された朝鮮半島の追求を放棄したのだ」と述べた。
北京訪問で勢いづいた金正恩は、8日に北朝鮮の新しい高推力ロケットエンジンの試験を視察した。国営メディアによると、これは平壌の最新大陸間弾道ミサイル「火星-20」を動力化するために使用される予定だという。
「北朝鮮は核保有を維持する正当性を与えられた」と、韓南大学極東問題研究所の林乙出教授は述べた。両首脳が「国際情勢がどのように変化しても」関係強化を誓ったことを指摘しての発言だ。
ソウルの北韓大学院大学の梁茂進教授は、北京の戦勝記念日パレードで最大の勝者は金正恩だったと語る。
「金正恩の国際的地位は大きく高められた」と彼は述べ、中国との経済協力を通じた関係修復が「将来の米国との交渉で活用できるだろう」と付け加えた。
ドナルド・トランプ米大統領は、第1期で非核化取引の試みに失敗したにもかかわらず、金正恩との外交再開に意欲を示している。
しかし米大統領は既に数々の外交難題に直面している。ロシアのウクライナ戦争を終結させようとする試みは停滞しており、米国の同盟国カタールにいるハマス幹部を標的としたイスラエルの前例のない攻撃は、トランプの国際的信頼にさらなる打撃を与えている。
暗黙の承認
北朝鮮の主要同盟国かつ経済的生命線である中国は、長らく国際的な取り組みの中心として、平壌の核野望を抑制しようとしてきた。 時には米国と協調することもあった。北京は金政権を交渉の場に引き出す上で重要な役割を果たし、複数回にわたり国連制裁に賛成票を投じてもきた。
しかし、米中関係が戦略的ライバル関係の激化の中で悪化するにつれ、北京は北朝鮮の核抑制への協力を縮小した。ロシアも同様だ。 かつては核不拡散の強力な擁護者だったが、ウクライナ侵攻以降、その姿勢を変えた。
2022年、中国とロシアは、北朝鮮の新たな弾道ミサイル発射を受けて追加制裁を求める米国主導の国連安保理決議に共同で拒否権を行使した。
中国が最後に「非核化へのコミットメント」を明言したのは、2024年の中日韓首脳会談だった。しかしそれは平壌の激しい反発を招き、北朝鮮は共同宣言を「重大な政治的挑発」であり、自国の主権に対する侵害だと非難した。
それ以来、中国は公式声明や文書でその目標への言及を控えている、と趙通・上級研究員は指摘する。
一方、ロシアと北朝鮮の軍事的結びつきは深まり、昨年には相互防衛条約の締結に至った。これにより、兵器や兵力の提供と引き換えに、プーチンが平壌のミサイル技術や核兵器運搬システムの高度化を支援する可能性が懸念されている。
ロシア当局者は公の場で北朝鮮の核計画を支持する姿勢を鮮明にしつつある。昨年9月、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、モスクワは北朝鮮の非核化を「終わった問題」とみなし、平壌の核兵器依存を防衛の基盤として理解していると述べた。今年7月にはさらに踏み込み、ロシアは北朝鮮の核野望を「尊重する」と発言した。
北京はそこまで踏み込んではいないものの、非核化目標の静かな放棄は微妙ではあるが重大な変化であり、中国・北朝鮮関係をより緊密にし、さらにはロシアを含む三者協力の勢いを強める可能性がある、と趙通上級研究員は述べた。
北京の軍事パレードで天安門の楼上に並んで登場するという前例のない共演を果たした習・プーチン・金だったが、会談の場で三者首脳会談が行われたとの報道はなかった。
「不穏なシグナル」
北京の独立系政治評論家・呉強は、北朝鮮の核保有の容認は、米国とその同盟国が支配する世界秩序に代わるものを構想する習とプーチンのビジョンの一部を形成する可能性が高いと述べた。
「少なくとも、北京が平壌を甘やかし、アジア太平洋の安全保障に対するその核の脅威を容認することは、このような混乱が中国の戦略的利益に資すると考えられていることを示唆している。既存秩序の弱体化が目標に沿う限り、北京はそれを庇護する用意があるのだろう」と彼は語った。
それは10年足らず前、中国とロシアが米国と共に2016年と2017年の国連安保理で北朝鮮への制裁強化に賛成票を投じていた頃と比べると、際立った対比である。
実際、2015年の軍事パレード(第2次世界大戦終結70周年記念)で天安門楼上に立ったのは金正恩ではなく、当時の韓国大統領・朴槿恵だった。
一部の専門家は、習と金による「非核化」の公的な言及の欠如が、必ずしも中国の公式立場の変化を意味するわけではないと警告する。
ハワイ大学マノア校アジア研究学部の羅淑賢助教授は、首脳会談で従来の非核化呼びかけが削除されたとしても、中国が非公開の対話においてこの立場を放棄したとは考えにくいと述べた。その理由は、東アジアにおける「核ドミノ効果」に対する中国の長年の懸念だという。
北京は長らく、平壌を戦略的資産であると同時に不安定化要因とも見なしてきた。
北朝鮮は東アジアにおける米国とその同盟国に対する地政学的な緩衝地帯として機能してきたが、核兵器と弾道ミサイルの追求は地域の安全保障を損ない、中国の目と鼻の先で米国が軍事的プレゼンスを拡大する口実を与えてきた。また、これは連鎖反応を引き起こし、特にトランプ政権下で米国の核の傘の信頼性に疑問が生じる中、韓国や日本といった他の地域大国に独自の核兵器開発を促すリスクをはらんでいる。
カーネギー平和財団の趙通上級研究員は、既に韓国国内では、長期的な安全保障解決策として独自の核抑止力を求める声が高まっていると述べながら、「現行の進歩政権の下では可能性は低いが、全体としてそのような展開の可能性は高まっている」と付け加えた。
彼はまた、中国による北朝鮮の核保有の暗黙の承認には、トランプ政権高官からの「同盟国による核拡散容認」のシグナルや、AUKUS(米英が豪州の原子力潜水艦建造を支援する枠組み)への懸念も影響している可能性があると指摘する。中国はAUKUSを、核兵器関連物質の移転に向けた一歩だと描写してきた。
さらに趙上級研究員は、「こうした行動を、ワシントンが原則的な不拡散の立場から離れつつある証拠と解釈することで、中国は世界的な不拡散規範よりも自国の地政学的利益を優先することを正当化しているのかもしれない」としながら、「これは、不穏なシグナルを送るものであり、他の潜在的核保有国が大国間の対立を利用して独自の核拡散野望を進める勇気を与える可能性がある」と述べた。(“Kim has long sought recognition as a nuclear power. Xi may have just given it to him”, By Nectar Gan, Yoonjung Seo, CNN September 10, 2025)



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