「アメリカ・ファースト」のグローバル化:焦点を絞り、爪を研ぐアメリカ 

ドミトリー・トレニン 世界経済国際関係研究所・主任研究員、ロシア国際問題評議会・会員

ロシア・トゥデイ 2026年1月30

米国は今、主要な戦略ドクトリンを構成する「三本の柱」のうち、二つを公表した。2025年末の「国家安全保障戦略(NSS)」、そして1月の「国家防衛戦略(NDS)」である。残すは「核態勢の見直し(NPR)」のみとなった。多くの観測筋は、ドナルド・トランプ大統領の安保戦略を「革命的」と評した。ロシア国内では、慎重ながらも、場合によっては肯定的な反応さえ見られた。今回の防衛戦略は多くの概念を発展させたものだが、ロシアを含む特定の懸案事項については表現を和らげている。両テキストにおいて際立っているのは、露骨で、ほとんど冷徹とも言えるトーンだ。従来の「道徳的」な粉飾はほとんど姿を消した。その明快さは、不快ではあっても有益である。

ペンタゴンの新戦略は、数十年にわたり米国の政策を導いてきた哲学との決別を公然と宣言している。「ルールに基づく国際秩序」という言葉や、政権交代を通じた「国家建設(ネイション・ビルディング)」という宣教師的リベラリズムは、事実上破棄された。トランプの政治的ライバルたちに結びついたこれらのドクトリンは、アフガニスタンのような終わりのない消耗戦を招いた「失敗」として扱われている。この意味で、ワシントンは後悔しているわけではなく、現実的な結論を導き出しているのである。すなわち、他国の社会をアメリカの姿に作り替えようとする試みは、コストがかかりすぎ、信頼性も低すぎることが証明された、ということである。

この拒絶は、より根本的な転換へと繋がっている。米国は、多極化する世界において、もはや普遍的な統制を行使できないことを暗黙のうちに認めている。資源は集中させなければならず、責務には優先順位をつけなければならない。同盟国をもはや「依存者」として甘やかすことはない。彼らには、より多くの対価を払い、より多くを実行し、その見返りとしての政治的自律性への要求を抑えることが期待されている。事実上、ワシントンは自らの「帝国」を合理化しようとしているのである。

同時に、この戦略は決して平和主義的なものではない。その根底にある哲学は、アメリカの軍事的優位の維持である。この見方において、平和は「力の立場」からのみ可能となる。テキストでは「民主主義」や「西側」といったイデオロギー用語が影を潜め、代わりに権力、利益、強制といった言葉が並ぶ。米国は孤立主義へと退却しているわけではない。その介入主義が進化しているだけなのである。大規模な占領や長期の安定化任務は過去のものとなり、短期間でテクノロジーを集約した攻撃が主流となる。経済封鎖や制裁は引き続き正当な手段であり、選択的な武力行使も同様である。「体制転覆(レジーム・チェンジ)」という言葉は修辞的には捨て去られたかもしれないが、非友好的な政府を武力で弱体化させ、あるいは転覆させることは依然として実行される。

トランプのアメリカは、中国やロシアを含む他の中枢勢力の存在を容認している。しかし、それは対等さを認めることではない。これらの勢力に対し、米国の優位を受け入れ「責任ある」行動をとるよう要求しているのである。つまり、ワシントンが定義した限界の範囲内で行動せよ、ということだ。これがトランプ版の「多極化」である。すなわち、「アメリカの条件に基づく共存」である。

同戦略では、本土防衛と西半球(南北アメリカ大陸)の支配が何よりも優先されている。米大陸の安全保障は、米国の国家存続と不可分なものとして扱われている。トランプによる「モンロー主義」の更新版は、米大陸における米国のほぼ絶対的な軍事的支配の回復を構想している。域外勢力、とりわけ中国の存在は制限されるべきものとされる。パナマ運河、メキシコ湾、そしてグリーンランドといった戦略的資産は、極めて重要な結節点(ノード)として扱われる。ミサイル防衛や北極圏での布陣と結びついた、グリーンランドの戦略的支配を確保するためのデンマークやEUへの米国の圧力は、このロジックに合致している。

第二の優先事項は、インド太平洋と中国の封じ込めである。ワシントンは、北京がこの地域で覇権を握ること、特に台湾の支配やいわゆる第一列島線への進出を阻止しようとしている。米国は直接的な衝突の回避を口にするが、中国との交渉は圧倒的な力の優位性があって初めて可能になると強調している。軍備増強、同盟国の再武装、そして「威嚇」が抑止の主要な手段として提示されている。

第三の優先事項は、同盟国との関係再編である。相対的な重要性が低下したと見なされている西欧諸国には、防衛費の大幅な負担増(GDP比最大5%の可能性)が求められている。その見返りとして、同盟国は戦略的自律性を得るわけではない。彼らには米国の政策、特に対中政策に従い、米国製兵器を購入することが期待されている。NATOは存続するが、米国の戦略におけるその独占的役割は希薄化している。ワシントンは、より「トランザクショナル(取引的)」な同盟システムを望んでいるのである。

ロシアは依然として同戦略の中に登場するが、その役割は以前の時代に比べて格下げされた。もはや米国自身に対する直接的かつ差し迫った脅威としては描かれていない。むしろ、主にNATO東部の加盟国にとっての「執拗な」挑戦として記述されている。その含意は、欧州の同盟国は自らの費用でロシアに対処すべきであり、米国は支援的な役割に留まるということだ。ワシントンの主敵が「中華人民共和国」であることは明白である。

この戦略は、ロシアとの戦略的安定についてはほとんど触れていない。新戦略兵器削減条約(新START)が期限切れを迎える中、軍備管理の未来は不透明である。米国は自らの戦略的核兵器の開発において行動の自由を好んでいるように見える。これは重要なシグナルである。数十年にわたり核の安定を支えてきた構造が浸食されつつある。

ロシアにとって、いくつかの結論が導き出される。第一に、トランプ政権下の米国は、ウクライナ問題を含むいかなる戦術的合意があろうとも、予見可能な将来において地政学的な敵対者であり続けるということだ。「グランド・バーゲン(大いなる妥結)」や「新たなヤルタ体制」への期待は非現実的である。特定の懸案事項で協力は可能かもしれないが、対立は構造的な常態であり続ける。

第二に、アメリカの衰退を誇張すべきではない。米国は依然として強大な軍事、技術、金融パワーを保持している。トランプの戦略は、核心的な勢力圏の支配を固め、主敵である中国に資源を集中させることで、相対的な衰退を食い止め、逆転させようとする試みである。この試みが成功するかどうかは別問題である。国内の抵抗や政治的分断が継続性を損なう可能性があり、今後の選挙による変化も影響してくるだろう。

第三に、核抑止力は引き続きロシアの安全保障政策の根幹である。軍備管理体制が弱体化するならば、ロシアの抑止力の信頼性と生存性を強化しなければならない。同時に、ロシアの安全保障は外部のバランスだけでなく、国内の安定と結束にも依存している。政治的移行期は、敵対者が利用しうる脆弱性を生じさせうる。

米国の欧州からの「距離」は、欧州大陸における対立を軽減するものではない。今日の西欧は、ここ数十年のどの時期よりもロシアに対して敵対的である。モスクワは、核抑止力を含む、NATOの欧州加盟国に対する軍事的・地政学的な抑止戦略を維持しなければならない。安全保障分野におけるベラルーシとの統合はさらに重要性を増す。

北極圏では、アメリカの野心がロシアの利益と直接衝突する可能性がある。モスクワは北部の防衛インフラを強化し、北極海航路を保護する必要があるだろう。グローバルな視点では、中国との軍事技術パートナーシップが、ユーラシアにおけるロシアの戦略的地位にとってますます中心的なものとなる。中東では、イランの能力を支援するための北京との調整が、米国の圧力に対する対抗軸となる。キューバのような国家への政治的・経済的支援もまた、このロジックに合致する。

全体像は明確である。米国の新防衛戦略は「撤退」ではなく、「集約と優先順位の変更」に関するものである。それは、より選択的で、より公然と武力に基づくアメリカの覇権の変奏曲を描き出している。ロシアにとって、これは構造的なライバル関係と限定的な実務的協力が長く続くことを意味する。また、抑止力への継続的な依存を意味する。国内の強靭性と、西側ブロック外でのより深いパートナーシップこそが、米戦略のこの新しい段階に対応するために不可欠となるだろう。“America First goes global”, ‘America narrows its focus, and sharpens its claws’, By Dmitry Trenin, a lead research fellow at the Institute of World Economy and International Relations, a member of the Russian International Affairs Council (RIAC), Russia Today 30 January, 2026)

コメント

タイトルとURLをコピーしました