スティーブン・コリンソン記者
戦争は、不法な関税とは違う。大統領の気まぐれや、暴落する市場を一時的に支えるために、スイッチを入れたり切ったりできるものではないのだ。
ドナルド・トランプ大統領が、予告していたイランの発電所への攻撃を見送ったことを受け、いま問われるべき核心的な問いは、彼がまた「TACO」(トランプはいつも最後にビビる)したのかどうかではない。
たとえ本人が望んだとしても、果たしてトランプはこのイランとの戦争から「出口」を見つけられるのか、という点だ。
数日間にわたって言葉を二転三転させた後、トランプは月曜日(23日)、紛争の緩和に向けた最初のシグナルを発した。彼はイランとの「生産的な協議で15項目の合意に至った」と言及したのだ。対するテヘラン側は、対話など一切存在しないと述べている。
直近の展開を最も好意的に解釈するなら、米国とイラン双方が、さらなるエスカレーションの代償があまりに恐ろしい段階に達し、両者とも出口を必要としている、ということだろう。こうした「悟り」が戦争を終わらせるきっかけになることはある。
トランプは、石油輸出の要所であるホルムズ海峡を開放しなければ発電所を爆撃すると脅し、敵を瀬戸際まで追い込んだ。テヘラン側は、米国の同盟国である湾岸諸国の重要インフラを焼き払うことで報復すると宣言した。この大火災は世界恐慌を引き起こし、トランプが助けると誓ったはずのイラン市民の人道状況をさらに悪化させる恐れがあった。
しかし、事態の進展が間近であるという見方に対しては、懐疑的にならざるを得ない理由が多々ある。
トランプの支離滅裂で矛盾した言動が数日間続き、政権側も戦争の正当性や出口戦略の一貫した説明できていない現状では、米国がいかなる声明を出そうとも信頼性に欠ける。
大統領には、自分が設定した期限の最中に爆撃を行う癖がある。彼が自ら宣言した「発電所攻撃の5日間の一時停止」を破ったとしても、今さら誰も驚かないだろう。
また、一部の冷笑的な観察者は、この大統領の「一時停止」が、ちょうど世界の市場取引が行われる一週間と重なっている点に注目している。週末明けに株価先物が急落し原油価格が高騰する中で、彼は単に市場の安定というクッションを手に入れようとしただけではないのか?
公式声明が市場の急変動を抑えるために使われたのは、これが初めてではない。そして、それは再び功を奏した。月曜日、ダウ、S&P500、ナスダックはいずれも1%以上上昇し、世界的な指標である北海ブレント原油は11%下落した。米国のドライバーたちは、ガソリン価格が下がることを期待することだろう。
なぜトランプは頭を冷やす必要があるのか
トランプが時間を稼ぎたい理由は、他にもあるかもしれない。イランの石油産業の心臓部であり経済の要所であるハルク島への侵攻、あるいはホルムズ海峡の島々や沿岸地域の占領という選択肢を可能にする米軍部隊が、まだ完全には集結していないのだ。日本から展開した海兵遠征部隊(MEU)はまもなく到着するだろうが、西海岸を出発した第2陣は先週ようやく動き出したばかりだ。
また、トランプが誇張を好むことも忘れてはならない。経験上、彼が外交的進展を煽り、イランが合意を「切望している」と主張する場合、たとえ、意図的な欺瞞が外交上の突破口を作るための手段に使われることがあるにせよ、それは大言壮語である可能性が高い。
ある日、戦争の「終結」を語ったと思えば、翌日には「拡大」を口にする大統領の激しい動揺は、安定した戦争指導者の伝統とは相容れないものだ。しかし、それこそがトランプの本質である。月曜日の動きは、すべて自身の「タフガイ戦術」が外交的進展を生んだと主張するための策略のようにも見えた。
この予測不能さと、自ら作り出した危機を自ら和らげようとする傾向は、トランプの私生活やビジネス、政治キャリア、さらには数々の司法トラブルにおいて見慣れた光景だ。毎日が「日没まで持ちこたえる」ための探求として展開される。この手法で、トランプは終わりのない即興のダンスを踊り続け、年貢の納め時を先延ばしにし、自らの行動が招く最悪の結果を回避してきた。
しかし、ペルシャ湾においては、トランプのこの場当たり的な手法が限界を超えて試されるという、冷酷な現実がある。
イランは米国とイスラエルの猛攻によって火力の差を見せつけられ、海・空・陸の資産に極めて甚大な損失を被っている。イスラム聖職者政権の高官たちも一掃された。
だが、紛争が4週目に入る中、イランもまた自らの対抗手段を証明してみせた。ホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界経済、そして11月の中間選挙で勝つという共和党の政治的希望—を人質に取ったのだ。
論理的に考えれば、開戦前からすでに超急進的だった政権が、最高指導者を殺害され、米・イスラエルのミサイルと戦闘機による猛攻に耐え抜いた後で、トランプの要求に対してより柔軟になるとは考えにくい。
トランプが提示する終戦の条件(恐らくイランの核計画と長距離弾道ミサイルの放棄が含まれる)は、交渉決裂の要因となるだろう。なぜなら、この3週間の出来事は、「ならず者政権」が将来の外国勢力による攻撃に備えて、なぜそのような「保険(核やミサイル)」を保持しようとするのかを、まさに証明してしまったからだ。
たとえ対話が始まったとしても、イラン側で誰が交渉に当たるのかさえ不透明だ。権力が分散化され、重要人物を失った政権は、集団的な意思決定を下すのに苦労するだろう。そして、一部の専門家が信じているように、イスラム革命防衛隊(IRGC)が全権を握っているのだとすれば、以前よりもさらに強硬な姿勢をとるはずだ。
さらに、かつてワシントンはイランの比較的穏健な当局者と対話したことがあったが、結局はより急進的な勢力によって妥協を阻まれてきたという経緯もある。
また、イランの指導者たちが、大統領の態度の急変や矛盾、感情的なSNSの投稿を、「トランプに経済的なダメージを与える戦略がうまくいっている証拠」と解釈したとしても、何ら不思議ではない。
なぜトランプの選択肢は「悪いもの」しかないのか
イランでこの先、何が起きるかは誰にもわからない。指導部の暗殺や米・イスラエルの攻撃によって、まだ表面化していない致命的な亀裂が政権内に生じている可能性はある。しかし今のところ、体制崩壊の明確な兆候は見られない。
空爆によってイランの地域的な脅威は大幅に減退した。だが、武力がまだイランを屈服させていないのであれば、米国側からの大幅な譲歩なしに、イランが最大の武器である「海峡の支配権」を手放す理由を、トランプは説明できていない。
それでも、大統領が交渉の展望に惹かれる理由は容易に理解できる。彼には「出口」が必要なのだ。なぜなら、彼が取り得る行動の多くは、どれも魅力に欠けるからだ。
現在の形態で戦争をエスカレートさせ、海峡周辺のイラン資産に火力を集中させることもできるが、それによって船が安全に航行できるほどテヘランの能力を叩ける保証はない。
あるいは、地上軍の投入を決断することもできる。しかし、それはトランプがかつて反対した「終わりのない戦争」を想起させ、政治的な「ルビコンの川」を渡ることになる。
「TACO」の選択肢、つまり、本物かどうかにかかわらず勝利を宣言して撤退することは、確かに魅力的に見える。しかし、そのまま立ち去れば、トランプの戦争に反対した湾岸の同盟諸国を、怒り狂い、かつ勢いづいたイランの脅威にさらすことになる。また、イランの高濃縮ウランの在庫を確保せずに戦争を終わらせることは、将来的に核武装を許すことになり、トランプが掲げてきた戦争の最大の正当性を自ら掘り崩すことになるだろう。
歴代の大統領は、しばしば「良い選択肢がない」危機に直面してきた。しかし、トランプが自ら作り出したこのイラン情勢ほど、出口の見えない泥沼に陥った例はほとんどない。(“Why Trump may not be able to TACO in Iran — even if he wants to”, By Stephen Collinson, CNN, March 24, 2026)




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