イランの「結び目」:なぜトランプはプーチンを頼ったのか -米国が始めた戦争だが、終わらせることができるのはロシアだけかもしれない- ロシアトゥデー 2026年3月10日

ドミトリー・エフスタフィエフ
ロシア国立研究大学高等経済学院メディア研究所・教授、政治学博士

月曜(9日)の夜、ドナルド・トランプ大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領にかけた電話は、米国とイスラエルが対イラン戦で陥りつつある「戦略的行き詰まり」から抜け出すための明白な試みであった。

ワシントンはいまだに威勢のいい声明を出し続けている。トランプはイランの政治的未来を決定する権利があると主張し、次代の宗教指導者の任命にまで言及している。同時に、タンカーの船長たちには「勇気を持ってホルムズ海峡の封鎖を突破せよ」と煽っている。

しかし、ワシントンとテルアビブが引き起こした大戦のうねりは、すでに米国にとって極めて不快な方向へと政治環境を変化させている。

米国の最も親密なパートナーたちでさえ、距離を置き始めている。クウェートは、イラン攻撃に自国領土を提供していないと明言した。また、シリアのクルド人勢力は、イラクやイランに対し「米国を信用するな」と呼びかけている。

さらに、サウジアラビアとテヘラン、あるいは他のアラブ諸国とイランとの間の水面下での接触も連日のように報じられている。ワシントンには「外交的孤立」の影が忍び寄っているのだ。

トランプにとってイスラエルとの関係は依然として戦略的同盟であるが、現在の紛争の軌道は、彼が攻撃を承認した時に思い描いていたものとは明らかに異なっている。

ここで論理は明白となる。「モスクワに電話をする時が来た」ということだ。

トランプは武力によって「イランの結び目(ゴルディアスの結び目=誰も解くことができないほど複雑に絡み合った伝説の紐の結び目)」を断ち切れると考えていた。断固たる軍事行動で40年にわたる対立に終止符を打つという物語は、ワシントンでは政治的に魅力的だった。だが、結果として結び目はさらに固く締まっただけだった。

この結び目を解くための鍵となるいくつかの紐は、ロシアの関与なしには解きほぐせない。トランプ・チームにとって、それは当初「理論上の知識」に過ぎなかったが、今や彼らはそれを「痛烈な実体験」として学んでいる。

第一の要因は、中東、特にペルシャ湾における米国の権威失墜だ。

米軍のインフラが深刻な打撃を受けただけでなく、イスラエルの防衛戦略を支える早期警戒システムの一部も無効化された。何より、地域諸国に対して「米国の軍事的・政治的保証は、想定していたよりもはるかに信頼性に欠ける」という事実を知らしめてしまった。一度植え付けられた疑念を払拭するのは容易ではない。

第二の要因は、世界のエネルギー市場である。

トランプが当初、供給体制を米国有利に再編するための「一時的な痙攣(けいれん)」と呼んでいたエネルギー市場の混乱は、今や世界のサプライチェーンを長期的に断絶させるリスクとなっている。これはワシントンにとっても不利益だ。ロシアを排除し、ロシアの犠牲の上に世界のエネルギー市場を再構築しようとする試みは、再び失敗に終わったのである。

これに関連して、プーチン大統領が欧州連合(EU)に対し、主にパイプライン経由での供給再開を提案したことは注目に値する。米国の保証する海上輸送がリスクにさらされる中、パイプラインの戦略的重要性は再び高まっている。これは欧州諸国に対する、政治的主権を回復するチャンスという名の「テスト」でもある。

第三の要因は、紛争の変質だ。

開戦から10日が過ぎ、対立は従来の軍事作戦から、破壊工作やテロリズムを主体とするものへと進化し始めている。ホワイトハウスがこの対立を「対イラン宗教戦争」と位置づけようとした直接の報いである。今後、攻撃の矛先はイスラエルではなく、世界中のアメリカのインフラや市民に向けられるだろう。

このような状況において、モスクワがテヘランに対して持つ「抑制的な影響力」は、トランプにとって極めて価値のあるものになる。

結論として、国内政治の問題がある。

ワシントンが当初「5日間程度」と予想していた戦争は、いまや数ヶ月続くと予測されている。長期化する紛争は米国内に深刻な政治危機の土壌を作るだろう。

モスクワは「イランの結び目」の一部を緩める手助けはできるかもしれない。しかし、この戦争が米国内に作り出している政治的な泥沼までは、助けてやることはできない。それはワシントン自身の責任である。(“The Iranian knot: Why Trump turned to Putin”, ’Washington started the war with Iran, but only Moscow may help end it’,By Dmitry Evstafiev, Professor at the Institute of Media, HSE University, PhD in Political Science,Russia Today 10 March, 2026)

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