トランプは多大な犠牲を伴う不評なイラン戦争の複雑な現実に直面している ニューヨーク・タイムズ 2026年5月4日

ゾラン・カノ=ヤングス 記者

比較的短期間で経済的影響も最小限に留まるとした
トランプ大統領の予測は、崩れ去りつつあるようだ

イラン戦争開始から2ヶ月、トランプ大統領は、多大な費用を要し、極めて不評で、明確な終結が見えない紛争という複雑な現実に直面している。

エネルギー市場は混乱している。国防総省は、これまでの戦費が250億ドル(約3兆8000億円)に上るという初の公的な推計を発表した。議会の主要な共和党議員らはしびれを切らしつつある。そしてトランプ氏は、参戦に全く関心を示さないドイツなどの海外同盟国を激しく非難している。

1日(金)、支持者の群衆を前に、トランプ氏は後悔はないと強調した。

「私が行ったことは、愚かだったのか、勇敢だったのかは分からないが、賢明なことだった」と、共和党の強固な支持基盤である退職者コミュニティー「ザ・ビレッジズ」でトランプ氏は語った。そして「私はまた同じことをするだろう」と付け加えた。

しかし、比較的短期間で経済的影響も最小限に留まるとしたトランプ氏の予測は、彼の周囲で急速に崩れ去りつつあるようだ。

トランプ氏は、2月28日にイスラエルと共に開始したこの戦争を繰り返し正当化し、イランに核兵器を持たせないことが不可欠であると述べてきた。米国とイスラエルは軍事目標を撃破し、最高指導者(ハメネイ師)を含むイランの高官らを殺害したが、現地政府は依然として維持されており、米国に痛手を与える能力を保持している。

紛争が続く中、トランプ氏はベトナムやイラクでの長期戦を引き合いに出し、米国のイランへの関与は「決して長くはない」として、米国民に「大局的に」見るよう促した。

 わずか3週間前、トランプ氏はイランが彼の要求すべてに同意したと述べ、進展が近いことを示唆していた。イランは濃縮ウランの撤去で米国に協力し、エネルギー価格は下落し、深刻な政治的波及効果を伴う、拡大しつつある世界的危機は鎮静化するはずだった。しかし、そのどれもが実現しなかった。

トランプ氏は戦争の今後について、イランは合意を望んでいると主張する一方で、テヘランの指導部は非常に「支離滅裂」で誰が決定権を持っているのか判断しにくいとも述べ、矛盾したメッセージを発している。また、まとまらないかもしれない合意交渉のために、特使に18時間も飛行機に乗らせる価値はないとも述べた。

そして1日、ホルムズ海峡の再開に関するイランの最新の提案に満足していないと述べた後、こう語った。「率直に言って、合意など全くしない方がいいのかもしれない。本当のことを知りたいか? なぜなら、このまま放っておくわけにはいかないからだ」。

2日(土)、彼はソーシャルメディア上で、イランの最新の提案を検討しているものの「受け入れ可能だとは想像できない」と述べ、自身の姿勢をさらに強めた。

トランプ氏は、イランに対するモデルは、米軍がニコラス・マドゥロを失脚させた(2026年)1月のベネズエラでの軍事作戦であると語っていた。しかし、この2つのシナリオは大きく異なる。ベネズエラではマドゥロ氏のみが追放され、政府の他の大部分はそのまま残り、トランプ政権に協力的な姿勢を見せた。イランの場合はそうではなく、その理由の一部はイランの指導部が広範な軍事能力を統制していることにある。

現在、両者は意志のぶつかり合いに陥っているようだ。イラン側が濃縮ウランの引き渡し要求に応じるのを拒む中、ワシントンはイランの船舶に対する封鎖を維持している。トランプ氏は1日、イランの貨物船1隻の拿捕を称賛し、米海軍の行動を「海賊」のようだと表現した。2日、ファルス通信の報道によれば、イランの高級将校は、イランと米国の間に新たな衝突が起こり得ると述べた。

トランプ氏はまた、軍事攻撃が再開される可能性を認めている。彼は2日、フロリダで記者団に対し、詳細は語らなかったものの、イランへの軍事攻撃の再開はあり得ると語った。「だが、分かっているだろう、それは起こり得る可能性だ」と彼は言った。

ホルムズ海峡は今後、数週間にわたり事実上の閉鎖状態が続くと予想されており、エネルギー価格の高騰が長期化する見通しが強まっている。ガソリン価格はすぐに下がるとのトランプ氏の主張に反し、クリス・ライト・エネルギー長官は先月、価格が年内一杯高止まりする可能性があることを認めた。

海峡の閉鎖は、2週間後に控えたトランプ氏の重要な訪中も複雑にしている。習近平国家主席は、中国が石油とガスの約3分の1を輸入しているこの水路を米国が再開することを要求している。

この戦争は、トランプ氏と世界の同盟国との亀裂を深めている。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相が、トランプ氏はイランとの戦争を巡って「屈辱を受けている」と述べた後、トランプ氏は同首相を激しく非難し、ドイツから数千人の軍隊を撤退させると発表した。彼は、今回の戦争から距離を置いているイタリアやスペインに対しても、同様の措置を講じる可能性を示唆した。

大統領は、1日に期限を迎えた60日間の戦争権限法に基づく承認期限を過ぎたにもかかわらず、議会に戦争継続の承認を求めることを拒否している。政府側は、停戦によって事実上「時計が止まった」ため、そのような承認は不要だと主張している。

その主張を記した書簡が議会に送られたわずか数時間後、大統領は自らの主張を台無しにした。トランプ氏はフロリダで「我々が戦争中であることは承知の通りだ。なぜなら、狂信者に核兵器を持たせるわけにはいかないということは、皆さんも同意してくれると思うからだ」と語った。

共和党が議席を失うと予想されている中間選挙まであと6ヶ月というタイミングで、戦費への懸念が高まる中、一部の共和党議員はこの「時計が止まった」とする主張に難色を示した。今週初め、国防総省の関係者は、これまでの戦費が250億ドルに達したと発表した。これは、昨年長期化した政府閉鎖の中心となったオバマケアの補助金拡大に要する費用とほぼ同額である。

トランプ氏はこれに対し、王室との公式晩餐会やフロリダでの減税に関するスピーチなどで、イランの核能力を封鎖するためであれば、この戦争はガソリン価格がいかに急騰しようともそれに見合う価値がある、と繰り返し主張している。

しかし、ほとんどの世論調査では、この戦争はアメリカ国民の間で不評であることが示されている。

第1次トランプ政権で国務省高官を務めた共和党の戦略家、マシュー・バートレット氏は、この一貫性のないメッセージでは有権者を満足させることはできないだろうとしながら、次のように述べた。

「メッセージの発信は、混乱という言葉では片付けられないほどだ」とバートレット氏は語った。「今週、政治、経済、そして外交面までもが悪化し続けていることに注目すべきだ。あらゆる面で下降線を辿っており、戦争が新たな1週間、さらには新たな1ヶ月へと突入しようとする中で、これは決して良い兆候ではない」(“Trump Faces the Complicated Reality of a Costly, Unpopular War in Iran”, ’President Trump’s predictions of a relatively short-term conflict with minimal economic consequences appear to be crumbling’, By Zolan Kanno-Youngs, The New York Times May 4, 2026)

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