金正恩は大国間ゲームで大きな優位を確立しつつある ニューズウィーク 2026年6月12日

トム・オコナー記者

米国の関心がイランに釘付けになる中、そこから何千マイルも離れた場所にいるもう一人の「最高指導者」が、核に裏打ちされた自らの地政学的地位を巧みに利用し、大きな成功を収めている。

北朝鮮の最高指導者である金正恩総書記が今週前半、平壌で中国の習近平国家主席と行った首脳会談は、両国間の65周年に及ぶ中朝友好協力相互援助条約の再確認にとどまらず、金氏が世界舞台で自らの存在感を誇示する絶好の機会となった。

そのわずか数週間前、習近平氏は中国国内で米国のドナルド・トランプ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とそれぞれ個別に首脳会談を行ったばかりだった。習氏にとって金正恩氏との会談は、昨年9月に北朝鮮指導者を中国に迎えて以来2度目であり、北京が平壌を最高レベルの「重要なプレイヤー」としていかに重視しているかを如実に物語っている。

韓国・峨山政策研究院の研究員であり、韓国軍合同参謀本部の諮問委員も務める梁旭(ヤン・ウク)氏はニューズウィークに対し、「金正恩にとって習主席の平壌訪問は、北朝鮮の地政学的価値が大幅に高まったことを証明するものだ」と語った。

「平壌は、中国やロシアの単なる従属的なパートナーではなく、主要国間の地域的・世界的な競争が激化する中で、戦略的重要性を受動的ではなく能動的に高めている不可欠なアクターとしての地位を確立した」と梁氏は指摘する。

北京・モスクワ・平壌の「枢軸」

北朝鮮はすでに独自の地政学的地位を占めている。今週記念された1961年の条約により、北朝鮮は中国にとって「唯一の公式な軍事同盟国」となっている。その一方で、2024年6月にプーチン氏と結んだ包括的戦略パートナーシップ条約は、長年のモスクワ・平壌関係をもう一つの相互防衛枠組みへと格上げした。金正恩氏はこの条約に基づき、即座にウクライナとの戦争においてロシアを支援するための部隊を派遣するという行動に出た。

中国は、緊密化するロシアと北朝鮮の関係に対して比較的静観する姿勢をとってきた。同時に習氏は、米国が地域の二大同盟国である日本および韓国との軍事パートナーシップを強化していることを受け、ロシア・北朝鮮の両国との絆を補強しようとしている。

米政府高官は10日、韓国の担当者と会談し、「核協議グループ(NCG)」を通じて抑止措置を強化する方法について議論した。その数日前には、ワシントンと東京の代表者が「拡大抑止対話(EDD)」として知られる同様のイニシアチブを通じて協議を行っている。

「米国、韓国、日本による安全保障協力の深化は、北朝鮮、中国、ロシア間のより緊密な協調を促す追加的な動機となっている」と梁氏は言う。そして「3カ国はすべて核兵器を保有しており、それぞれの地域における米国の戦略的影響力を制限するという共通の利益を持っている。これを公式な同盟構造と呼ぶのは時期尚早だが、主要な安全保障問題において3カ国の利害の一致が強まっているのは確かだ」と述べた。

梁氏は「北京とモスクワにとって、北朝鮮は北東アジアにおいて米国とその同盟国に対して、さらなる難題を突きつけることができる便利な戦略的パートナーだ」としながら、「平壌にとっては、中ロとの緊密な関係は外交的孤立を和らげ、抑止力を強化し、ワシントン、ソウル、東京と対峙する上での機動空間を広げることにつながる」と付け加えた。

米ハドソン研究所のアジア太平洋安全保障議長であるパトリック・クローニン氏は、今回の金・習会談における両者の核心的な思惑を次のように分析した。

クローニン氏は「習近平は、朝鮮半島を含むアジア大陸の『ゲートキーパー(門番)』としての中国の地位を強化している。北京にお伺いを立てずには、何一つ重要なことは起きないという構図だ」としながら、「一方で金正恩は、自らが『核保有国』であるというアイデンティティを磨き上げ、核大国たちの最高峰のテーブルに永久の席を確保するルートを歩もうとしている」と、ニューズウィークに語った。

トランプへの道

クローニン氏はまた、「金正恩はトランプとの会談を見据えて布石を打っている」とも指摘した。トランプ氏は、北朝鮮の指導者と直接会談した唯一の現職米大統領である。

トランプ氏は1期目の任期中、北朝鮮の非核化と引き換えに制裁を解除するという和平プロセスの試みの一環として、金氏と3回会談した。2019年に交渉が破綻すると敵対的なレトリックが再燃したが、金氏とトランプ氏は特に互いへの直接的な批判を避けてきた経緯がある。

金正恩氏は中ロ訪問から帰国した数週間後の昨年9月、最高人民会議での演説で、ワシントンが「他国の非核化という不条理な追求」を放棄し、「我が国との真の平和共存」を求めることを条件に、ワシントンとの接触を再開する用意があると宣言した。

公式の朝鮮中央通信(KCNA)が発表した報道によると、金氏は当時、「個人的には、現在のアメリカのトランプ大統領に対して依然として良い記憶を持っている」と述べていた。

トランプ氏側も、金正恩氏との再会談を模索する意向を公言している。彼は北朝鮮指導者との「非常に良好な関係」について頻繁に語っており、直近では先月、北京へ向かう大統領専用機(エアフォースワン)内での記者団とのやり取りでもそのことに言及した。

クローニン氏は「トランプは金正恩との首脳会談を視野に入れている」と主張し、今年の中間選挙以降、おそらく11月後半に中国の深圳で開催予定のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議の舞台裏で、この動きを本格化させる可能性があるとみている。

金正恩氏の狙いは、トランプ氏との個人的な信頼関係を利用して、中国の習近平氏が台湾問題で展開したアプローチと同様の手法で、米国の政策に影響を与えることにある。

「金正恩にとってのチ梁スは、習近平が台湾問題を再編成しようとしたのと同じように、核問題を再編成することだ」とクローニン氏は言いながら、「北京訪問後、トランプ大統領は中国側の言い分を受け入れる姿勢を強めているように見え、中台緊張の責任は頼清徳総統にあると非難し、武器売却を一時保留にし、米国はアジアでの戦争に巻き込まれることに関心がないことを強調した」と付け加えた。

北東アジアを専門とするプリンストン大学のギルバート・ロズマン教授は、トランプ氏について金氏との会談に「意欲的」であると表現し、そのような首脳会談は「北朝鮮を、たとえ暗黙の了解であれ、『核保有国』として容認・認識することが前提条件になるだろう」と指摘した。

また、韓国の李在明大統領も金正恩氏との接触を模索している。南北対話の復活は「韓国の進歩派が長年抱いてきた悲願であるが、金正恩が突きつける条件を満たすのは極めて困難だろう」とロズマン氏は述べ、今回の習氏と金氏の会談が北朝鮮の外交的交渉力をさらに高めたことを強調した。

ロズマン氏は「習・金サミットは、金正恩が熱望してきた外交的ブレイクスルーの扉を開くものだ」と言いながら、「北朝鮮の国境をコロナで厳格に封鎖した期間を経て、彼は今、自らの条件に基づいた外交の展開を予見している」と付け加えた。

イラン戦争という要因

しかし、このような新たな平和へのアプローチが、前回の失敗したプロセスよりも成功するかどうかは不透明だ。

米韓の政府高官に政策助言を行ってきた韓国国防大学校の金永峻(キム・ヨンジュン)教授は、トランプを金正恩にとっての「2年間限定の一時的なカード」と表現した。つまり、「金正恩がトランプと会ったとしても、それは金氏の威信を一時的に高めるだけの『一回限りのショー』に終わる」という意味だ。

より永続的なカードとなるのは、北朝鮮が保有し、ますます近代化されている核兵器の軍事力そのものだ。平壌の核能力へのこだわりは、高度なウラン濃縮を行いながらも核保有の敷居を越えなかったイランに対し、米国とイスラエルが容赦なく戦争を仕掛けたことによって、さらに強固なものとなった。

ワシントンや、すでに金正恩氏が「平和統一政策」を公式に撤回した相手であるソウルからの安全保障の約束に望みを託す代わりに、北朝鮮は伝統的な同盟国である中国やロシアとの結びつきを固めることに、これまで以上に突き進んでいる。

大統領直属の民主平和統一諮問会議の委員も務める金永峻教授はニューズウィークに対し、「金正恩はイランの運命を目の当たりにし、北朝鮮は絶対に核を放棄しないと確信したはずだ」と言いながら、「そして金正恩は伝統的な『一民族による統一政策』を破棄し、現在は『敵対的な二国家政策』を選択して、中国やロシアとのより安定的で予測可能なパートナーシップを強化している。そして中ロは、北朝鮮の核保有と国家の生存、国連制裁の無効化を今後も支持し続けるだろう」と付け加えた。

峨山政策研究院の梁氏も、イラン紛争が金正恩氏の計算を補強するだけだと感じている。現在、金氏の地政学的戦略が本質的に、激化する国際環境の中で、体制の生存、核抑止力、そして北朝鮮の戦略的自立性を最大化することに集中しているからだ。

梁氏は、「イランを巻き込んだ最近の武力衝突は、『核兵器こそが体制の安全を保証する究極の担保である』という平壌の長年の信念を補強する可能性が極めて高い」としながら、「北朝鮮の指導者たちは、信頼できる核抑止力を持たない国家は外部からの軍事圧力に対して常に脆弱であると一貫して主張してきた。よって、最近の中東での出来事は、核能力を維持しさらに発展させようという北朝鮮の決意を強めることになるだろう」と述べた。

そして、梁氏は「同時に、金正恩は平和統一という伝統的な目標をほぼ放棄し、代わりに北朝鮮を、国際的な影響力を持つ『恒久的な核武装国』として確立することを目指しているようだ」としながら、「彼の戦略は、中国とロシアの両方に対して北朝鮮の戦略的価値を最大限に売り込みつつ、どちらのパートナーにも過度に依存しすぎない十分な独立性を維持することにある」と結論づけた。(“Kim Jong Un is gaining major ground in the great power game”,  By Tom O’Connor, Newsweek June 12, 2026)

コメント

タイトルとURLをコピーしました