「米国は終わった」30年前の予言が国家戦略に、トランプを迎えた中国の本音は? プレシアン 2026年5月14日

元東旭 東亜大学教授

2026年5月13日の夜、北京首都国際空港。エアフォースワンのタラップを降りてくるトランプを、中国国家副主席の韓正(ハン・ジョン)が出迎えた。300人の子供たちが米中両国の国旗を振り、ブラスバンドが演奏を始めた。9年ぶりの訪中であった。

華やかな儀礼の裏側で、両国はお互いの弱みを正確に把握していた。

トランプは歴代最低水準の支持率と中間選挙のプレッシャーを抱えてやって来た。イラン戦争は予想よりも遥かに長期化し、米国の財政と世論は消耗しつつある。習近平は不動産不況と若者の失業、技術封鎖という構造的な負担を背負ったまま彼を迎えた。二人の指導者は、お互いの必要性のために机を挟んで向かい合った。それこそが、今回の会談の本質である。

1. 衰退の直感:王滬寧の予言と中国の世界観

今回の会談を貫く最も核心的な潮流は、中国が米国を見つめる視線の根本的な変化だ。

2025年のブルッキングス研究所の研究者らによる追跡調査によると、中国の公式資料における「米国衰退」関連用語の頻度は、2025年の1年間でほぼ2倍に急増した。中国の官営シンクタンクが公然と用いる「帝国の晩鐘」という表現は、もはや民族主義的なインターネットコミュニティのレトリックではない。中国の外交戦略の深層構造として定着した「米国衰退論」の公式な言語なのである。

この世界観の根底には、一人の人物・王滬寧(ワン・フーニン)がいる。1988年から翌年にかけて米国を旅した当時、若き復旦大学教授であった彼は、帰国後に『アメリカ VS アメリカ』を著した。彼はホームレスや薬物中毒、人種暴動と政治の麻痺で汚れた米国を記録し、こう結論付けた。

「西欧の個人主義と民主主義は、アジアの集団主義にいずれ敗北する」

30年が過ぎた現在、王滬寧は中国共産党政治局常務委員会の序列第4位である。習近平の最側近の理論家であり、「中国の夢」の設計者だ。30年前の一人の学者の直感は、今や中国の国家戦略となった。

この世界観から導き出される戦略は単純だ。「待つ」ことである。米国が内部の矛盾によって、あるいは軍事・財政的な過負荷によって自滅していくプロセスを見守りながら、時間を稼ぐ。今、北京が選択したのは「闘争」ではなく「時間」だ。戦略的忍耐、すなわち「ロングゲーム(Long Game)」なのだ。

イラン戦争において中国が公に強硬な立場表明を避けてきたのは、弱さからではなく戦略である。長年のパートナーであるイランを前面に立てて米国と正面衝突する代わりに、中国は「グローバル秩序の安定的な仲介者」として自らをポジショニングし、間接的な影響力を拡大している。莫大な軍事費を負担することなく外交的空間を広げる、費用対効果に極めて優れた戦略だ。

2. 北京のテーブルにある5つの議題と「ジェンセン・ファンのアラスカ」

今回の会談のテーブルの上には、5つの議題が絡み合っている。貿易とサプライチェーン、イランとホルムズ海峡、台湾、AIと技術冷戦、そしてレアアース(希土類)。その重みと密度はそれぞれ異なる。

この会談の性格を最も圧縮して見せた場面は、開幕前にすでに演出されていた。訪中団への「間際での合流」だ。エヌビディア(NVIDIA)のCEOジェンセン・ファン(黄仁勲)は、当初のリストには入っていなかった。メディアが彼の不在に注目すると、トランプが直接電話をかけた。ファンはアラスカまで飛び、エアフォースワンに乗り込んだ。北京着陸のわずか数時間前のことだった。

この場面は、単なる儀礼上のハプニングではない。AIと先端半導体がもはや「交渉の枠外の領域」ではないことを宣言した事件だ。冷戦期に米国とソ連が核技術を交渉のテーブルに乗せなかったのとは異なり、今や米国はAIを交渉のテーブルに乗せたのだ。ジェンセン・ファンのアラスカでの合流は、その現実を象徴的に物語っている。

しかし、合流がただちに「開放」を意味するわけではない。米国の戦略はすでに二つの層に分離して動いている。

一つは、トランプが求める短期的な「数字」だ。中国による大豆の買い付け、LNG(液化天然ガス)契約、ボーイング製航空機の発注といった、中間選挙向けの成果である。もう一つは、米国の国家戦略レベルにおける「構造」だ。先端半導体とAI分野における中国の猛追を遅らせ、技術覇権の優位を維持しようとする長期的な企図だ。完全なデカップリング(切り離し)でも、完全な開放でもない「管理された技術冷戦」こそが、現在の米国戦略の実体である。

中東問題はこの構図をさらに複雑にする。米国の世論の60%以上がイラン戦争に反対しており、ホルムズ海峡は依然として不安定だ。トランプは出発前に「イランについて長い対話を行うだろう」と述べた後、「中国の助けは必要ない」とトーンを調節した。その言葉の表裏の間に、米国が直面している戦略的な窮地がそのまま露呈している。

台湾は、今回の会談で最も危険な議題だ。トランプは訪中の前日、台湾への武器売却を議題に上げると公言した。これは「6つの保証」*からの逸脱を示唆する発言だった。

*6つの保証(六項保証、Six Assurances)とは、1982年に米国のレーガン政権が台湾に対して非公式に提示した、台湾の安全保障に関する約束である。

米国は、①台湾に対する武器売却の終了期日を設定しない②台湾への武器売却に際し、中国と事前協議を行わない③中国と台湾の間の仲介役を務めない④台湾関係法を改定しない⑤台湾の主権問題に関する立場を変更しない⑥台湾が中国と交渉を行うよう圧力をかけない。

すなわち、米国が「一つの中国」政策を維持しながらも、台湾を一方的に見捨てないという安全装置である。中国はそれを台湾介入の根拠と見て強く反対し、台湾は米国の安保公約の重要な政治的根拠とみす。

習近平にとって台湾は体制の正統性と直結する問題だ。米国にとって台湾は、民主主義の価値の象徴である以上に、TSMCやAIチップ、先端受託製造のサプライチェーンが集中する戦略的チョークポイント(要衝)である。台湾の掌握はAI覇権の地形そのものの再編を意味する。それゆえ、双方ともにここでは容易に退くことも、容易に押し切ることもできない。

3. 構造的ジレンマ:「求めていた米国」と「恐れる米国」

しかし、中国の自信の裏側には、深い不安も共存している。

米国の外交シンクタンクである全米外交評議会(CFR)の経済学者ゾウ・リウ(Zoe Liu)は、この逆説を鋭く捉えた。習近平は「常に求めていた米国と、最も恐れていた米国を同時に手に入れた」。トランプ流の孤立主義は米国主導の同盟体制を弱体化させ、中国の外交空間を広げてくれる。これが「求めていた米国」だ。しかし、彼が振りかざす極端な保護主義とサプライチェーンの再編は、中国の輸出中心経済の根幹を揺るがす。これが「恐れる米国」だ。

2025年の中国経済は、予想を上回る5%の成長率を記録した。しかし、これは輸出の外形的な成長が内需の不振を覆い隠した数値に過ぎない。不動産不況や若者の失業、地方債務は解消されていない。60歳以上の人口比率は2035年には30%を超える見通しだ。中国にとっても、時間は無限ではない。

結局、米中両国は互いの危機を管理するために、「勝利」ではなく「現状維持」を選択しつつある。戦略国際問題研究所(CSIS)のスコット・ケネディは、今回の首脳会談の最も現実的な結果を「概ね中国に有利な、表面的な休戦」と規定した。

中国は大豆・エネルギー・航空機の大規模な購入によってトランプに見える形の経済成果をプレゼントし、米国は高率関税や技術圧迫の強度を一定部分調節しつつも、AI覇権構造の核心には触れない方向で交渉する。衝突のコストを下げ、競争を管理可能な水準に維持するための、冷徹な現実主義的(レアル・ポリティーク)な調整を図る。これこそが、今回の会談の本質である。

2017年のトランプの最初の訪中時に発表された2500億ドル規模の契約のうち、その多くが実現しなかったという事実を記憶しておく必要がある。華やかな数字は、構造的な変化とは異なる。レアアースの問題も、半導体の統制も、台湾海峡の緊張も、2日間の晩餐会で解消されるような性質のものではない。

4. 観戦者を超えて:韓国の戦略的自律性

この巨大な覇権調整のプロセスにおいて、韓国は単なる観戦者として留まってはならない。

中国のレアアース輸出制限は、すでに韓国の自動車産業やバッテリーのサプライチェーンを揺るがした。ホルムズ海峡の不安定さは、韓国のエネルギー輸入構造に直接的な衝撃を与える。台湾海峡の緊張の高まりは、朝鮮半島の安保構造と直結している。二つの強大国が韓国のサプライチェーンやエネルギー、安保環境を決定するテーブルに就いている間、韓国はその結果を待つだけの位置に立たされている。

欧州やインドは戦略的自律性を強化している。サウジアラビアは米中双方を同時に活用し、東南アジア諸国は「多重整列(Multi-alignment)」とサプライチェーンの多変化へと動いている。さらに米国でさえ、中国との完全な断絶を選択してはいない。イーロン・マスクやティム・クックは北京へと向かい、ウォール街の資本は中国市場の開放を望んでいる。それにもかかわらず、当事者であるはずの韓国の外交言語は、未だに冷戦の二分法の中に留まっている場合が多い。

今必要なのは、「親米」か「親中」かの選択ではない。米中戦略競争の構造を冷徹に読み解き、その中で技術主権とサプライチェーンの安定、そして外交的自律性を同時に確保するための、精緻な戦略的言語である。(“미국은 끝났다” 30년 전 예언이 국가 전략으로, 트럼프 맞은 중국의 속내는?, 원동욱・동아대학교교수, 프레시안  2026.05.14.)

コメント

タイトルとURLをコピーしました