イラン戦争は米国の兵器備蓄を枯渇させ、火力の著しい低下をもたらした。
イラン紛争の長期化はモスクワと北京に利益をもたらすと、
アナリストらは語る。
アントン・トロイアノフスキー
ジョナサン・スワン
エリック・シュミット
ジュリアン・E・バーンズ記者
米高官らによると、トランプ大統領のイランに対する戦争は米国の兵器備蓄を懸念すべきレベルにまで枯渇させ、アジアや欧州からの補給物資を吸い上げているという。
欧州やアジアにおける防空ミサイルやその他の重要な兵器の急速な供給減少は、米軍の装備を薄くするだけでなく、米国との潜在的な紛争を検討する際にロシアや中国を一層大胆にさせる可能性があると、専門家らは指摘する。
イランへの爆撃によって、世界的な供給ネットワークからの精密部品を含み、製造に何年もかかる数百万ドル規模のミサイル数千発が費やされた。イランの報復砲撃に対する防衛は、トランプ政権の最高位級高官らを非公式に狼狽させるほどに米国の防空ミサイル在庫を摩耗させ、米国による欧州やアジアの顧客への納入遅延を引き起こしている。
米高官らによると、イランでの作戦行動によりペンタゴンは欧州やアジア全域から艦船、航空機、防空部隊を中東へ急派せざるを得なくなり、装備の整備や兵士の士気に連鎖的な悪影響を及ぼしている。その結果、これらの地域における米国の火力が著しく低下しており、軍および情報機関の間で懸念が高まっている長期的な意味合いへとシフトしていると、米・西側の高官らは述べる。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、米国には「大統領が命じるいかなる作戦も、いかなる時間と場所において実行するための有り余るほどの火力を備えている」と語った。しかし専門家らは、この弾薬危機―その一部はトランプがジョセフ・R・バイデン・ジュニア前大統領から引き継いだものであるが―大統領任期を超えて持続することがほぼ確実であると指摘する。
ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員トム・カラコ氏は、弾薬の枯渇は「従来型の抑止手段の世代を超えた壊滅」であると語った。北京やモスクワにおける意思決定への影響は、何年にもわたって響き渡る可能性があると、同氏は述べた。
「それがロシアや中国の意思決定の計算に重大な影響を与えないわけがない」と、米国の兵器備蓄を追跡してきたカラコ氏は語った。「彼らは自分たちが選択したタイミングで、極めて計算された行動を起こすかもしれない。なぜなら、覚えておいてほしいが、我々が再構築するには何年もかかるのだからだ」と付け加えた。
イラン戦争に至る会合のやり取りに詳しい2人の高官によると、この会合の中で、ダン・ケイン統合参謀本部議長は大統領に対し、すでに枯渇している備蓄をさらに汲み出すことのリスクについて伝えていたという。トランプは戦争がすぐに終わると信じ実行を決断したという。ケイン将軍の報道官は大統領との個人的な会話についてのコメントを拒否した。
2月28日にイスラエルとともにイランを攻撃した後、トランプは数週間以内の勝利を繰り返し約束した。5ヶ月以上が経過した現在、彼はイランを屈服させることも、戦争を終わらせる方法を見つけることすらできずにいる。弾薬不足は、先月末にトランプが「大打撃を与える」とした爆撃作戦を棚上げするよう説得する一因となったと言われている。しかしそれはまた、イランを攻撃するという大統領の決定が、米国とその同盟国を他の脅威に対してより脆弱な状態に陥れたことを示している。
トランプ政権は軍需業者と連携し、生産の加速と拡大を試みている。しかし、それらの努力を考慮に入れたとしても、米国がイラン戦争で使用された1,500発以上のパトリオット防空迎撃ミサイルを補充するには2年以上かかる可能性がある。機密の軍事詳細を議論するために匿名を条件に語った、備蓄について報告を受けた2人の人物によると、これらのミサイルの現在の米国での在庫は1,700発未満であるという。
トランプは、大統領権限下の政府全体で弾薬不足を報じるニュース記事に憤慨している。彼は政府全体で大規模な情報リーク犯の調査を命じ、刑事訴追を要求している。彼は非公式に顧問らに対し、弾薬危機についてのいかなる議論も敵に弱みを示すものだと語っており、公の場ではこの問題を過小評価し、存在を否定し、あるいは前任者のせいにし続けている。
ホワイトハウスのレビット報道官は声明で「我々の防衛企業はこれまで以上に多くの弾薬を製造しており、同時に記録的なレベルで工場や設備を急速に拡大している」としながら、「機密の軍事情報へのアクセスを委託されている者で、それをメディアにリークする者は誰であれ、その信頼を裏切り連邦法に違反しており、法律の最大限の範囲で訴追されるべきである」と述べた。
ペンタゴンの首席報道官ショーン・パーネルは、兵器不足の報告は虚偽であると述べ、米国には「大統領が選択した時間と場所で打撃を与えるために必要なすべてが揃っている」と付け加えた。
弾薬不足の最も直接的な影響は、ウクライナの首都キーウで感じられている。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は今週、西側の同盟国から自国に提供される防空ミサイルの数が、2025年と比較して今年3分の1に激減したと語った。5日、ウクライナはロシアが発射した28発のミサイルのうち1発も迎撃できず、少なくとも17人が死亡した。より多くの迎撃ミサイルがあれば「今日殺された人々の命を救えたかもしれない」とゼレンスキーは語った。
アナリストらが指摘する根本的な問題は、ウクライナの西側支援国が防空兵器を製造できる以上の規模で、ロシアがミサイル生産を拡大させたことである。イラン戦争はこの不均衡をさらに悪化させた。
下院軍事・情報委員会に所属するジェイソン・クロウ下院議員(コロラド州選出・民主党)は、米国の「時代遅れの」防衛調達プロセスは「急速に進化する戦争の性質に実際についていくことを許さない」と語った。「正直に言って、我々の敵対者にはそのような障害はない」とも付け加えた。
世界的な供給難の中、米国とその同盟国は防空ミサイルの囲い込みを始めている。6日に大統領執務室で記者からゼレンスキー氏のミサイル増強の訴えについて問われたトランプは、「我々だってミサイルが欲しいんだ」と吐き捨てた。
トランプは、米国の兵器備蓄のいかなる不足もバイデンによるウクライナ支援のせいだと定期的に主張している。彼は6日にSNS上で、米国には「膨大な量の『弾薬』、特に特定のタイプの弾薬がある」と述べた。
米国には航空機から投下される10万発以上の誘導爆弾を含む、より先進性の低い弾薬の巨大な貯蔵があることは事実であると、戦略国際問題研究所(CSIS)は分析している。それらの兵器の多くの問題は、標的近くで投下しなければならないため、より多くの軍用機が撃墜されるリスクにさらされる点にある。
高性能の巡航ミサイルは数百万マイル離れた場所から発射できるため、そのリスクを回避できる。しかし高官らによると、米軍はイランとの戦争中に「陸軍戦術ミサイルシステム(ATACMS)」や「精密打撃ミサイル(PrSM)」など、特定タイプの長距離ミサイルの在庫を大幅に使い果たしたという。
長距離ミサイルは、イランよりもはるかに高度な防空システムを持つ国である中国やロシアとの戦争において決定的に重要なものとなる。防衛情報に詳しい米高官によると、両国政府は議会の予算プロセスや軍需企業の発表といった公開情報源だけでなく、自国の偵察衛星やその他の監視システムを通じて米国の備蓄を注視し、推計しているという。
ロシアで人気のある戦争賛成派ブロガーのアレクサンドル・コッツ氏は最近、「状況は非常に有利に展開しつつある」と「米国が保有する精密誘導兵器が減れば減るほど、ウクライナに届く兵器も少なくなる」と書いている。
仮に、トランプの後継者がウクライナへの支援を増強したいと考えたとしても、「空っぽの兵器庫ではそれは不可能だ」とコッツ氏は付け加えた。
備蓄枯渇の長期的な影響は、米国が、北京が自国領土だと主張する台湾への中国による侵攻の可能性に長年備えてきたアジアにおいて最も大きいかもしれない。米軍のインド太平洋軍はイラン戦争のための弾薬の主要な供給源となり、対中国戦に不可欠な同地域におけるトマホークやその他の長距離ミサイルの多くが在庫から転送された。
数百発の高度な防空迎撃ミサイルが韓国やアジアの他の地域から中東へ送られたほか、空母打撃群や海軍の最も高性能な駆逐艦のいくつかが、対イラン作戦を支援するために同地域から配備された。ペンタゴンが戦術的な警戒監視資産を中東へ振り向け、防空兵器を撤収させたため、在韓米軍は北朝鮮との戦争においてより脆弱になるだろうと米高官は語った。
枯渇は広範な影響を及ぼしている。一部の米高官は、アジアで韓国や日本が非核防衛で自国を守る米国の能力に疑問を抱き、より信頼できる抑止力を確立するために自前の核兵器を追求する傾向を強めるのではないかと危惧している。欧州では、米国での生産遅延を踏まえ、米国の同盟国がすでに他国からの兵器購入を増やそうとしている。
米高官らによると、ロシアと中国は米国の備蓄が限定的であることを長年理解しており、特定の作戦計画を実行可能にするレベルまで在庫が補充されるには、時間がかかることを今や理解しているという。その意味で、イラン紛争の長期化はモスクワと北京に利益をもたらすと一部のアナリストは述べる。
「この戦争が長引き、我々がイランと戦火を交え続けるほど、米国にとって弾薬の問題は深刻化し、この脆弱性の窓はより大きく、より目に見えるものになる」と、アメリカン・エンタープライズ研究所の防衛アナリスト、トッド・ハリソン氏は語った。
カーネギー国際平和財団のロシア軍専門家ダラ・マシコット氏は、モスクワはイラン戦争が始まる前からすでに米軍の備蓄に関する前提を再評価していたと語った。ウクライナでの4年間にわたる紛争は、米国の兵器生産の拡大ペースが彼らの想定よりも遅いことをロシアの軍事計画立案者たちに示したのかもしれないと、同氏は述べた。
最近ウクライナへの渡航から戻ったマシコット氏は、「それはロシアのシステムに入り込むべきではない誤った計算だ。なぜなら、彼らはNATOに対する自国の力についての認識を変え始めるからだ」と語り、「それは我々が彼らに辿り着いてほしくない結論へと彼らを導くことになる」と付け加えた。(“The U.S. Is Burning Through Weapons in Iran. Russia and China Are Taking Note.”, ‘The Iran war has depleted U.S. weapons stockpiles, resulting in a significant erosion of firepower. A more drawn-out Iran conflict benefits Moscow and Beijing, some analysts say.’, By Anton Troianovski, Jonathan Swan, Eric Schmitt and Julian E. Barnes, The New York Times, August 8, 2026)



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